お客様が本当に求めているもの

この週末は勤務先の神戸を離れ、自宅のある岡山に帰省していました。

帰省の目的は「息子に入学祝いを買ってあげること」と「なじみの美容院で髪をカットしてもらうこと」でした。

そんなにオシャレに気を配るタイプじゃないので、本当は美容院じゃなくて安い理髪店でもいいのですが、美容師さんの明るい人柄がとても気に入っているので、家族ぐるみで何年もこちらのお店に通い続けています。

こちらのお店、美容師さんの出産を機にご自宅をリフォームされ、最近移転オープンしました。住宅兼店舗なので、ご家族の方に育児のサポートをしてもらえて、お仕事を続けやすくなっているようです。
私が髪を切ってもらってるときも、奥の方から赤ちゃんの元気な声が聞こえてきます。そろそろハイハイを始めたんだとか。

店内には開放的な吹き抜けがあって、シーリングファンが優しく空気の流れを作り出しています。内装も木材やレンガをうまく使って温かみのある雰囲気です。家具のセンスも良くて、すごく気持ちが落ち着きます。

思わず、

「いや〜、すごく趣味のいいお店ですね。やっぱりこういうのって美容院専門の建築士さんに設計してもらったりしたんですか?」


と聞いてみたのですが、

「それが違うんですよ〜。普通の小さな工務店さんにお願いしたんです」


と、意外な答えが返ってきました。

「えーっ、そうなんですか?専門の業者さんの方が色々知識があるからいいのかと思ってたんですけど」


「それが、専門の業者さんだと色々決まりごとがあるみたいで・・・こちらが何かお願いしても、『いや、それはできないことになってますから』と断られちゃうんですよ。
前のお店は美容室をよく扱う業者さんだったんですけど、あまりこちらの言うことを聞いてもらえなくて、けっこう我慢したんですよ」


たしかに、前の店も、私から見るとかわいらしい感じの良い店でしたし、美容院らしく機能的にまとまった内装ではあったのですが、今のお店とは比べ物になりません。
作り方がルール化されているというか、規格化されていて、大きな欠点もないかわりにどうしても画一的な感じになってしまいます。

「今のお店を作ってくれた工務店さんは、私の話をすごく良く聞いてくれたんです。美容院を作った事はなかったそうなんですが、『それじゃ、ここはこうやってみましょうか?』『それでは次はこれでどうでしょう』と色々な提案をしてくれたんです。だからイメージどおりのお店になって、まるで自分でお店を作ったような気分になったんですよ。自分が建てたわけでもないのにね(笑)」

そう話す美容師さんは本当に嬉しそうで、このお店にとても愛着を持っているようでした。
自分の気に入った場所で、好きな仕事ができている、とてもいい顔をされていました。


帰りのクルマの中で、私の中にひとつの考えが浮かびました。

お客さんは、その商品に対し「自分で作った」「自分で選んだ」という実感を持てたときが一番嬉しいんじゃないだろうか?

どんなよいものであっても、一方的に押し付けられたものに対しては、あまり人は満足感を持てないんじゃないだろうか?

人は誰もが意志を持って生まれてきます。
あるモノができる過程、選ばれる過程に自分が関与できること、これに人は満足感を感じるんじゃないか?

と感じた一日でした。

自分もエンジニアとして、お客さんにそういう喜びを与えられる存在になれればいいな、と思います。

お客さんに「自分で作った」「自分で選んだ」かのように感じてもらえるソフトウェア、いつかつくってみたいですね。